――まずは幼少期のお話を。

人見知りが激しくて、おとなしい子だったと思います。ほら、国語の授業とかで、順番に教科書を読むことがあったじゃないですか。ああいう、人から注目を浴びる状況が、たまらなく苦手でした。
それに加えて、あまり自分の意思で行動することもなかったなあ。僕、中学のときはサッカー部で、高校生になってからはラグビー部に所属してたんですけど、どっちも友達から誘われてなんとなく始めて、両方とも惰性で3年間続けたような感じでしたね（笑）。

――途中でやめようと思わなかった？

正直、何度も思いましたよ。でも、やめるというアクションを起こすほうが面倒くさくてイヤだった（笑）。
ただ、そんな僕でも自分で決断したことが1つ。「大学には絶対行かない」。

――（笑）。なぜ？

いやあ、大学生って毎晩仲間たちと飲み歩いたり、とにかく「ウェ～イ」と遊び回ったりしているイメージがあって。今思えば完全に偏見だけど、内向的な僕からするとめちゃくちゃ怖い存在（笑）。だから、進学はせず、かといって就職することもなく。フリーターをしながらお金を貯めて、二十歳になると同時に思いきって上京を。

――なぜ東京に？

昔から好きだった、アニメやゲームを原作にした舞台に出演する俳優になろうかと。そのためには、東京に出るのが手っ取り早そうだったので。
上京後、まずは「俳優科」のある専門学校に入学。そこで2年間演技の勉強をして、卒業後はそこそこ有名な劇団の研究生として下積みからスタートし、知人のツテで舞台に出させてもらったり、オーディションを受けて役をもらったりしながら、俳優活動をしていました。

――スゴいじゃないですか。それで、結果は？

26歳のときに挫折。というのも、演劇の道に進んだのもなんとなくだったんで（笑）。就職するのはイヤだったし、やりたいこともなくてフラフラしていたフリーター時代に、友人から「自分の好きなことを仕事にしてみたら？」と言われ、消去法的に決めて、飛び込んでみただけです（笑）。
とはいえ、そんな甘い考えで、演劇1本で食べていけるはずもなく。生活費は主にバイトで稼いで、これまた惰性でダラダラと東京で暮らしていました。でも、6年もそんな生活を続けていれば、「俳優で稼いでいくのはムリだな」とだんだんと限界を感じるようになってきて……。そのタイミングで見切りをつけて、熊本県にある実家に帰ることにしたんです。

――それでも6年間がんばったんですね。

でも、僕がその6年間で学んだことといえば、少しの演技の知識と飲み会の楽しさ（笑）。その当時の唯一の娯楽というと、稽古や舞台のあとの打ち上げ。気づけば、あんなに嫌っていた「ウェ～イ」な場が、大好きになっていました（笑）。
というわけで、実家に戻ってからも相変わらずフラフラ。そうこうしているうちに彼女もできちゃったという。ただ、それを機に「そろそろちゃんと働かないとなあ」と考えるようになって、地元のデリヘルで仕事を始めたんです。

――なぜ風俗店の仕事を？

単純に「高収入」に惹かれて（笑）。東京にいた頃にキャバクラのボーイ経験もあり、ナイトワークに抵抗がなかったので。実際に働いてみると想像以上に稼げるし、自分に合っていたと思います。
2年もいれば収入も安定してきたし、彼女と「そろそろ結婚したいね」なんて話も出るように。

――公私共に順調じゃないですか。

いやそれが……実は僕、彼女には仕事のことをずっと内緒にしててね。プロポーズをする前に打ち明けてみたところ、彼女がこの業界をあまりよく思っていなくて、猛反対されてしまって。
ただ、僕は高卒だし、一般企業での職歴もない。雇ってもらえそうな会社はあったものの、ナイトワークに比べると給料が劣るところばかりで、まったく魅力的に思えず……。だから、彼女には「転職した」と言いながらデリヘルでの仕事を続けていたんです。

――それからどうなった？

やはり女の勘はスゴいですね。数カ月後にフラれちゃいました。

――結婚も考えていたのに……。ツラかったでしょ？

そりゃ、そうですよ。でも、それよりも、元カノを見返してやりたいって気持ちのほうがデカかった。だから、そのとき働いていた風俗店をやめて、地元の小さな企業で営業マンとして働くことを決めたんです。当然年収は下がりましたが、入社当時はやる気に満ちあふれていましたよ。
ただね、これがもう、むちゃくちゃキツくて。

――どういう風に？

とにかく契約が取れなかったんです。その会社は飛び込み営業がメインだったから、営業経験のない僕には到底務まるはずもなく。だから、休みの日も出向いて仕事するようにしていましたが、どれだけ努力をしても成果を出せないうえに、上司に怒られまくる日々。給料もまったく上がらず、だんだん、「どうしてこんなことをやってるんだろう」と考えるようになっちゃって……。

――仕事をすることの厳しさを知ったと。

ええ、本当に。1年はなんとかがんばって耐えたんですが、ダメでした。
で、退職と同時に福岡に引っ越しを。

――なぜ福岡に？

実は……その半年ほど前に福岡旅行をしていて、飲み屋でたまたま話した女の子に一目惚れしちゃいまして（笑）。その子に「福岡に住みなよ！」と言われたのがきっかけで、実際に住んじゃったという（笑）。
ただ、「じゃあ福岡で何をする？」と考えてみたら、自分がのし上がれる場所は、風俗にしかないと改めて思ったんです。そこで目に飛びこんで来たのが『2980円』の求人。「現状に満足していない人、大募集」という文字にピンときて、すぐに応募。まさに、「今の僕じゃないか！」と（笑）。

――（笑）。入社後のことを。

業界経験があったから余裕をこいていたのですが、前のデリヘルとは忙しさが全然違った。業務をこなすのにただただ必死で、「これが人気店か」なんて驚いたのを今でも覚えています。
でも、どうせやるなら稼ぎたいと思っていた僕には、ある意味ピッタリ。すると、最初は簡単な業務だけだったのが、女の子や店舗の管理なんかもどんどん任されるようになってきて。それが評価されて、主任に上がったときは本当にうれしかったな。役職手当もつくようになりましたし（笑）。
やっぱり、がんばりが給与にしっかり反映される環境だと、やる気も湧いてくるもんです。たまに残業や1日フルで働く通し勤務がある日でも、僕は進んでやるようにしてて。だって、その分手当も出ますから（笑）。

――なんにせよ、がんばる理由になってよかったです（笑）。では、今後の目標を。

まずは店長になることが第一の目標です。

――ということは、第二の目標が？

まだまだ半人前の僕が言うのはアレですが、将来的には自分で風俗店を経営してみたい。もう、この業界に骨を埋める覚悟はできているので、どうせならとことん上を目指そうと。ただ、今の僕じゃ全然ダメ。だから今は目の前の業務に、がむしゃらに取り組んでいこうと思います。
ちなみに、上司や先輩たちに将来のビジョンについて話すと、笑顔で応援してくれるんですよ。そんなみなさんの期待に応えるかたちで、貢献していきたいですね。

――応援しています。あ、そういえば、一目惚れした女性とはその後？

そうですね……『2980円』に入社するきっかけになった彼女には感謝しています。これで察していただければと（笑）。